何かで読んだのですが、JRが駅中ビジネスを積極的に展開していることについて、批判的な意見を述べているものがありました。

気にしてみると、そういう意見は一つや二つではありませんね。

交通関係のネット記者が書いているのがほとんどだと思いますが、内容的には「国鉄の巨額の赤字を全部国民に押し付けておきながら、自分たちの駅構内という独占的に有利な場所で、鉄道事業と全く関係ない商売を始めることはけしからん。駅前商店街等の民業圧迫である。」というような内容です。

確かに、国鉄時代の多額の借金という負の資産を相続せずに、構内営業権などの正の資産のみを主張するやり方は、世の中の常識から見たら受け入れられるものではありません。国鉄民営化から30年が経過して、当時の事情を知っている人たちはみな50代以上になっていますから、私たちがそういう声を出して行かない限りは、いずれ忘れ去られてしまうわけで、数兆円の赤字を国民に負担させたことのすべてがなかったことになってしまうという危機感はあるのですが、でも、こと駅中ビジネスを見る限りにおいては、私は全く別の見方をしています。

 

ネット記者の書いた文章を読むと、改札口の中のお客様に対してキオスク程度ではなく、ショッピングモールのような駅中ビジネスをするということは、本来商業施設に課されるべき固定資産税が優遇されているとか、駅中で買い物をしてしまうと駅前商店街に人が流れなくなるということで駅前商店街がダメになるというような意見が多いのですが、では駅中が儲かるのかといえば、そりゃあ儲からないことはないでしょうけど、考えているよりは難しいのではないかと私は考えています。

 

以下は私が独断と偏見で駅中ビジネスを見た場合の意見でありますから、その私の意見に対する反論等は基本的に受け付けるつもりはありませんので、お読みになられる方はそのつもりでお進みください。

 

例えば東京駅や上野駅、品川駅、新宿駅などで駅中ビジネスが積極的に展開されていますが、私はああいうビジネスを見るにつけ、「大変だろうなあ。」と思うのです。その理由は何と言ってもあとから作っているからで、東京のターミナル駅などは100年も前に建設されたところがほとんどなわけで、その駅の下には地下街があったり地下鉄が走っているところがあるわけです。そういうところに新しいショッピング街を建設する。線路の下だろうが線路の上だろうが、100年も前に建設された駅構内に、1日も列車の運転を止めることなく、あれだけの商店街を建設するということは並大抵のことではないと思います。

何しろ掘り起こしてみて初めて構造がわかることだってあるだろうし、予期しないものが出てくることもあるかもしれません。基礎の杭一本立てるにしたって、どこから資材を搬入して、どうやってやるのか入念な調査を行って、慎重のうえにも慎重に計画して、とにかく1日も列車を止めないで工事を行うわけです。まして列車密度といったら半端ではない。そういうところで工事をしなければならないということは建設費がものすごくかかっているはずです。だから、減価償却もその分大きくなるわけで、だとしたらなかなか利益が出ない構造になるわけです。

 

あくまでも私の想像ですが、売り上げだってたかが知れているはずです。

なぜなら、改札口の中の商売だからです。

例えば東海道新幹線を利用するときですが、私の場合は時間に余裕がある時は東京駅の大丸デパートの地下で買い物をします。その理由は、まずは駅弁よりもデパ地下の商品の方がコスパが良いと私は思っているからで、ましてデパ地下なら様々な商品が並んでいる。ちょっと飲みたい気分の時はワインとチーズを買って乗ることもできますし、第一デパ地下ですから売り場の中を何度も行ったり来たりして、「やっぱりあれも買っておこう。」となるのです。

これに対して駅中、つまり改札口の中の商売というのは、私の場合はだいたい発車まであと15分とか20分の時に利用します。最近では駅中でも商品数も豊富で、デパ地下とほとんど変わらない品揃えになってきていますが、それでも、改札口の中にいる人間としては、「発車まであと何分」という心理状況ですから、デパ地下のように何度も売り場を行ったり来たりして、あれもこれも買うということはありません。つまり、目指すものだけを買ったらあとはさっさと列車に乗り込むわけです。

そう考えると改札口の中の商売というのは、お客様の購買心理としては時間との勝負ですから、顧客一人当たりの売り場での滞留時間が短い。つまりは客単価が低いのです。

でも、だからといって駅中で商売をしている棚子さんたちは、客単価を上げるためにわざわざ高い商品を販売することはできません。当然家賃がかかりますからJRに対して売り上げの一部を納めなければなりません。それはデパ地下でも家賃がかかるので同じことなのですが、客単価が違ってくる中で、そんなに簡単な商売ではないのではと思うのです。

 

私は数字を見たわけではありませんから、あくまでも独断と偏見なのですが、難工事で建設費が多くかかる割には客単価が低く、様々な制約がある駅中ビジネスというのは、それほどうま味がある、大もうけできる商売には見えないのです。

でも、勝手知ったるお客様にとって見たら、箱詰めの工業製品のような駅弁を買うよりも、駅中でサラダやお総菜を買って列車に乗るのということをやっている人も多いですから、選択肢が増えた分ありがたいことだと思いますし、駅前商店街で駄目になる商売というは、別にJRが駅中をやらなくたってダメになっていくというのは地方都市を見ていれば誰だって理解できるでしょう。少なくとも私にとって見たら、駅弁よりも駅中のお総菜系を買って列車に乗る方がありがたいですから、別にJRが独占商売をしているとは思わないのです。かえって、そんなに苦労してお客様のために選択肢を増やしてくれているというのに、きちんと評価されないのは気の毒だなあと感じるのです。

 

さて、そういう観点から見てみると、近年開通した「上野東京ライン」なる路線も全く同じような気がします。

「この区間にどうやって鉄道を作るんだろう。」

東京生まれで東京育ちの鉄道少年としては、昔から常磐線の列車が東京駅まで乗り入れていたり、東北本線の臨時列車が品川始発だったことも知ってます。でも、その頃にはなかった新幹線がすでに開通している中で、限られたスペースの中で、新幹線も山手線も京浜東北線も毎日走らせたままで線路を作るという建設の経緯を見てきましたから、「いやあ、大変だよなあ。」というのが正直な感想です。

実際にできた線路もくねくねしてるし上に上がったり下に下がったり。

困難な工事の結果だということはすぐにわかります。

まして100年前に建設された遺構のような路線で、下には道路があるし地下鉄も走っている。

そんなところに線路を通したのが上野東京ラインですが、ではJRが儲かるかといえば、山手線や京浜東北線のお客様が分散されるだけですから、直接的には新規需要の開拓にはならないのです。私などは、東海道新幹線で帰ってきて京成電車に乗り継ぐのに、今までは東京駅で下車していましたが、今では品川で降りて常磐線の上野東京ラインに乗って日暮里まで来るというルートになりましたから、かえって東海道新幹線の特急料金が安くなったりしているのです。

 

そう考えると、上野東京ラインも駅中も、そこまでするのを「利益に走ってけしからん。」ということは、私にはどうも違うと思えるのです。

あくまでも私の想像の範囲でありますが、私は駅中も上野東京ラインも本当にありがたいと思っているものですから、こんなことを書いてみました。

 

まあ、国鉄の負の財産を国民に押し付けておいて、営業権などの正の財産のみの権利を主張するということは、この国の法律的常識から考えてみれば許されることではありませんから、そういうことは私たち以上の世代がいつまでも声を大にして言い続けなければならないということは事実なんですが、でも、駅中とか上野東京ラインのような仕事というのは、きっとものすごいご苦労があるだろうということもたぶん事実でしょうから、そういうご苦労をされてまで国民の利便性を高めようと努力してくれていることも事実になるわけで、私はそういう点はきちんと評価しなければいけないのではないかと考えるのであります。

 

だって、今から相互乗り入れとか、地下化して連絡輸送とか言ったって、都市部でさえ生産年齢の人口減少による輸送力の伸び悩みは容易に予想されるわけですから、決して安易に儲けることなどできないという時代がやってくる。

これだけは事実でしょうからね。

 

皆様、本当にご苦労様でございます。

私は頭が下がるのであります。

 

なお、あくまでも独断と偏見による意見ですので、あしからずご了承ください。