車に乗らない若者たち

最近の若者たちは車離れが進んでいると聞きます。

 

私たちが10代だった頃は、免許が取れる年齢になったらすぐに教習所へ行って免許を取って、誰か友達の家の車を借りて、みんなでドライブへ行くなんてのが当たり前でした。

車は今よりももっともっと高嶺の花でしたが、一生懸命バイトして中古車を買おうとする友達もたくさんいましたし、私なども車検が半年ぐらい残っているポンコツ車をいくつか乗り継いだりしていた時期もありました。

テレビのCMも車がメインで、「ケンとメリーのスカイライン」なんてCMにみんなが夢中になって、そのCMを撮影した富良野の景色にあこがれて、北海道ブームが起きたりしていました。

 

ところが今の若い人たちは、車にはあまり興味がないようで、車を所有するという感覚も無いように見受けられます。

 

まあ、自家用車は高額だし、ローンと保険料と駐車場代を合わせたら都会では月に5万では足りないだろうし、モノに対する執着も私たちの頃に比べたらはるかに少ないのが今の若い人たちの特徴ですから、必要なときはレンタカーでも借りればよいと思っているのでしょう。

わが家の子供たちも上3人は既に独立して、都内の会社に勤めていますが、誰も自家用車を所有してませんし、「要らないよ。」と言っています。

免許はみな取っていますが、車に乗らない。

免許だけでも若い頃に取っておけば、将来乗ろうと思えばいつでも乗れる。

そう思っていましたが、車に乗らないまま30過ぎて40過ぎてと年を取ったとすると、自分の生活がそういうもんだと思ってしまうだろうし、その時になって、乗ろうと思っても「紙運転士」ですから、もう一度教習所へ行くとか、いろいろ苦労するうちに、「なら、いいや」と車に乗らない人生になるのではないかと思います。

つまり、都会から出ないで、都会で生活する人生を送るということで、そうすれば何も困らないのです。

 

では、そういう人たちが旅行へ行くとしたら、どういう旅行形態になるのでしょうか。

 

例えば私の場合は、出張も含めてですが、都市部が目的地であれば、飛行機や新幹線でそのまま目的地へ向かいます。

県庁所在地ぐらいの町であれば、駅前のホテルに泊まって、バスや市電、時にはタクシーで移動することで事足ります。

では、地方都市や田舎へ旅行するときはどうかというと、やはり飛行機か新幹線で近くまで行って、そこでレンタカーを借りて動き回ります。

そうしなければ、現地へ行っても身動きが取れませんからね。

ローカル線が走っていれば、飛行場からバスに乗ってそのローカル線の駅へ行くとか、新幹線から在来線に乗り継いで、そのローカル線に乗りに行くことができますから、ローカル線の駅がある町に降り立つことができますが、バスしか走っていないような町だと、田舎の長距離をタクシーに乗るなんてことはいくらかかるかわかりませんから、基本的にはレンタカーになってしまうと思います。

 

と、ここまで考えて、うちの息子たちならどうするだろうか? と気づいたのです。

 

ああ、たぶんレンタカーを借りるという発想はないだろうな。

だとすれば、そういう所は旅行の目的地にならないということに。

 

ローカル線の電車が走っていれば、新幹線や在来線から乗り継いで、その町が目的地になることはあるかもしれないけれど、車に乗らない人たちが多くなってきたら、旅行の性向や形態も大きく変わるはずで、鉄道がないところへ行ったってどうしてよいかわかりませんから、そういう所は目的地にならないということなんです。

 

例えば、北海道の広い大地。

今なら飛行機で飛んでレンタカーで歩く人たちが主流だと思います。

私が北海道を旅する場合もその方法です。

でも、今の若者から見たら、そのうち、北海道は観光の目的地じゃなくなる可能性がある。

空港から最寄りの都市まで連絡バスで行くことができても、そこからさらに都市間バスを乗り継いで、いろいろな街を歩くとは到底思えないんです。

私たちの頃は、アメリカ大陸をグレイハウンドのバスを乗り継いで旅をするなんてことが憧れでしたが、今の若者はおそらく日本国内でそういう旅行をしようなんて思わないでしょうし、その証拠に、リュックサックを背負った「カニ族」と呼ばれたような若者の姿は、今の北海道ではほとんど見かけませんからね。

つまり、地元の人たちは、観光客に来てもらうにしたって、鉄道が無くなったって、車があれば十分だと思っているかもしれないけど、次の世代の人たちにとって見たら、鉄道が無くなったら、旅行の目的地の対象から外れるということで、つまりは10年もすれば忘れ去られてしまうということなのです。

何しろ、今年56歳の私が10年後は66歳ですから、その年になって飛行機とレンタカーを乗り継いで今のようにバンバン旅行をしているとも思えませんし、30歳前後のうちの息子たちが40歳になるわけですから、世の中の主流は完全に車に乗らない人たちに入れ替わってしまうという風に私は考えます。

 

移住だってそうですよね。

今、田舎に移住しようと思う人たちは、免許を持っていて、車に乗れる人たちですが、これからの人たちは、特に都会に出た人たちは免許を取らぬまま、あるいは免許は持っていても車には乗らぬまま、30歳、40歳になっていくわけですから、車がなければ生活できないようなところには移住をしようとは思わない。つまり、そういう地域は「対象外」になるんです。

 

観光客が来ないということは、その地域を知ってもらうチャンスが無くなるということです。

いきなり移住しようという人は少なくて、まずは観光旅行に来てみて、気に入ったら何度か訪ねてきて、そして「住んでみようか」となるわけですから、その入口が無くなっちゃうということなんですよね。

 

別に鉄道なんかなくたって、道路が発達すればそれで十分。

地域の人たちはそう言うかもしれないけれど、それは、今そこに住んでいる人たちはそうかもしれないけれど、これからそこへ行こうという人はいなくなるわけですから、その地域にとっての潜在需要の掘り起こしが大変に難しくなって、それができないということはやがて廃れてしまうということになると私は思います。

 

鉄道が走っているからと言って、その町が栄えるというものでもありませんが、鉄道が無くなったら、潜在需要の掘り起こし、つまり外部からの観光需要の開拓ができなくなるわけですから、今、そこに住んでいる人たちが、やがて年老いて、順番に消えて行けば、その町自体がやがて消えてしまうということになることは、日本全体が人口減少に向かっている現状を考えたら、確実にやってくる未来だということは間違いないと私は思います。

 

ああ、恐ろしい。

 

若い人たちが車に乗らないということは、自動車会社の売り上げが減るという問題じゃないんですよね。

やっぱり、今鉄道があるところは、その鉄道を大切にして、いろいろ活用していかなければならないと思います。

「今あるものを有効に活用する。」

地域活性化や地方創生の時代と言われていますが、これができることが基本ではないでしょうか。

 

こういう基本的なことができないところは、やがて消えてなくなってしまう。

ちょっと過激な言い方かもしれませんが、私はそのように考えております。

 

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いすみ鉄道 社長ブログいすみ鉄道 社長

投稿者プロフィール

いすみ鉄道のようなローカル線は、鉄道会社といっても零細企業です。こういう小さな会社は、社長が何を考え、どういうポリシ―や方向性で進んでいるのかを皆さまに直接お伝えし、ご理解いただくことが大切だと考えています。このブログでは、地元の情報やイベントなども併せて、「いすみ鉄道の今日」をお伝えいたします。どうぞお付き合いくださいますようお願い申し上げます。

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